北海道ニセコ5ヶ月間滞在 最終章 〜春〜

2015年4月、北海道の春。

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もう鯉のぼりが上がっている時期だが
桜がようやくつぼみを付け始める頃だった。

気温は次第に上がり雨が降る日も多く、
雪も次第に溶けてようやく地面が見え始めた。
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ここで一つ、嬉しい出来事が起こった。

スキー場に携帯を落としてしまってから約1カ月。
大雪の降る日に埋もれてしまった携帯が見つかったのだ。

携帯を落としてから通信手段が無いので
毎回、スキー場の落し物案内所へ出向いて
届いていないかを確認していたが皆、皆無だった。

それが、ニセコの町から出て少し離れた場所へ引越しをする当日。
無いのも承知で、念のためニセコを出る直前に最後の確認へ向かった。
いつもの受付のお姉さんに携帯は届いていないか尋ねると
落し物を集めている所に電話を繋ぎ連絡を取ってくれた。

いつもはここですぐに無いと残酷なお告げを食らって
希望を打ちのめされ放心状態で帰るのだが、この日は違った。

いつもと違い、やけに電話が長い。
仕切りに「はい。はい。えぇ。そうです。」
などと、なんらかの情報を言い合っている様子が伺えた。

おっ?!これは…もしかして??
口が知らぬ間にまん丸に開いていた。

お姉さんが電話を切って一言。

『ありましたよ。』

っっっっっっっおぉーーーー!!!

奇跡降臨。

前回携帯を紛失した際に、
念のためにおっちょこちょいな自分がまた落としても水没しないようにと
あらかじめ手を打って防水ケースに入れていたために、
その日の昨日あたりの大雨で雪が大幅に溶けて
携帯が地上に姿を現し、使える状態で発見されたのだ。

落とした翌日からたったの2日間で1メートルほどの積雪があり、
一度は諦めかけて居たけれど、
スキー場で携帯を拾った方がわざわざ落し物を届けてくれたおかげで
なんとか今冬、2度目の携帯紛失を免れた。

それから落し物センターへ向かう事になり、
浮き立った心で人目もはばからずに空に右手を何度も突き上げて
何度もガッツポーズをして小走りで携帯を取りに向かったのだった。

シーズン終盤、Barの仕事を終えると、
上層階に併設されているロッジも宿泊客が居なくなったので、
お気に入りの広い屋根裏部屋もそろそろ出なければならなくなった。

次の住まいとなったのは、
ニセコから車で20分ほどの距離にある
オーナーのジェリーさん自宅。

ジェリーさんは去年に子供を授かり、アメリカに住む親に
子供の顔を見せに3週間里帰りするらしく、
そのあいだ犬2匹のペットの面倒を見る代わりに、
家と車をタダで貸してもらえる事になったのだ。

IMG_3015(写真 オーナージェリーさんの息子、レオくん)

ジェリーさんの家は温泉郷と言われる静かな集落にあった。
20m以上ほどある背の高い木々に囲まれた林の中にあり、
木の香りがする綺麗なログハウスだった。
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人の家なので家の中の写真は公開できないけれども
中も広々としていて、落ち着いた木造の空間だった。
部屋の中心には暖炉があり、ハシゴ階段を上がると2階部分は
広々としたロフトになっており
リビングを見渡せる位置にダブルベッドが置かれていた。

リビングから望める大きな窓からは空に真っ直ぐ生える木々に雪景色。
雪は徐々に溶け始めて真っ白な雪の上には、
今年の冬の間に折れた枝などがたくさん出てきて雪の上に次々と姿を現し、
真っ白な雪景色とは言えない。

所々、久々に顔を出した土からは、ふきのとうが力強く新緑を放ち
太陽を浴びているのが見える。

スキー場の横の屋根裏部屋もいい住まいだったが、
こちらは静かでとても住み心地が良さそう。
家に案内された翌日からジェリーさん夫婦はアメリカへ旅立った。

ログハウスでの生活はとても快適に過ごす事が出来た。

朝、目が覚めてロフトからリビングへ降りると
寝ている間に寂しく待っていたチワワ二匹が、
嬉しさのあまり吠えて飛びついてくる。

おはようの挨拶を済ませると、
犬のトイレなどを片付けて、餌や水を入れ替えて、
まだ肌寒い部屋を温めるために暖炉に火を灯す。

4月のニセコ周辺では、夜間に0度前後の気温まで冷え込むのだ。
(4月上旬−3度。4月下旬2度。)

暖かいコーヒーを入れて
リビングの大窓からベランダへ出てタバコを吹かす。
背の高い木々からは光が降り注ぎ、
気持ち良さそうに遠くで茂る笹が揺れているのを照らし出している。
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買ってきておいた北海道産の野菜を使って簡単な朝食を食べ、
犬の散歩を済ませると山へ2、3時間ほどスノーボードをしに向かった。

日に日に、真っ白に覆われていた山肌は姿を表す。

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雪質もハイシーズンに限らず、
毎日、前日とは微妙に異なるコンディションを楽しんだ。

雪が重たく、力を必要とする日もあれば、
黄砂でスピードが出ない日、
雨の後日は、ボコボコになった地面が
綺麗に整えられていたりもする。

春には雪が滅多に降らないので
雨の次の日の整ったコンディションを狙うのが
春スキーの醍醐味だと語る人も居た。

同じスキー場と言えど、毎回、毎日、
天候と微妙な気温の違いで雪質は違った。
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主に、今までにも紹介した、
石垣島からの付き合いのさとし、BARの相棒くりちゃん、
同年代で誕生日がほぼ一緒のいけちゃん、
この3人の誰かと一緒にいる事が多かった。
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目まぐるしいハイシーズンの仕事を終え、春には何も仕事がなくなり、
次の仕事が始まるまでは、のんびり過ごす。

ニセコに長年住む、さとしやくりちゃんがニセコでは、
このメリハリがあるのがとてもいいのだと言っていた。

やる時とやらない時がはっきりしているから、
やる時はやる。休むときは休む。
自分の中でのスイッチの切り替えが区別しやすいのだろう。

春に北海道では沢山の山菜が採れるらしく、
良くさとしに誘われ山菜狩りに連れて行ってもらった。

午前中スノーボードを楽しむと、そのままの足で山菜を狩りへ
雪の溶けている地域まで1時間ほど車を走らせる。
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さとしは毎年、沢山の行者ニンニクが採れる
秘密の山の中のスポットへ案内してくれた。
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行者ニンニクは主に、傾斜のきつい坂などにあることが多い。
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平坦な場所に咲いていたとしても、
鹿などの動物に食べ尽くされてしまうからだ。

けれどもその秘密の場所は平坦な地形にあり、
数も群生していて苦労することなく
安全に山菜狩りが出来る場所だった。
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行者ニンニクは、小ぶりの小松菜の様な姿をしていて、
大きくて20センチほど。
北海道ではアイヌネギとも呼ばれているそうだ。
IMG_3139 出来るだけ茎が太く二枚葉になっているものを選んで採るのが原則。
一枚葉から二枚葉になるまでに5〜6年かかるらしい。
葉が開ききって花が咲くまでに収穫しなければ食べることはできない。
行者ニンニクが発芽してから1〜3週間前後の内が収穫期と見られる。

一番の食べごろは葉が開く直前だ。
DSC_0072何枚もの枯葉を貫いて地上に顔を出す
春の生命力漲る新緑の山菜。

採取する際にはハサミを使う。
茎の根元を2、3cmほど掘り起こして、一番根に近い所で切り採る。
抜いてしまえば、次に生えて来ないからだ。
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毎年、ここを知っている仲間達でずっと食べられる様に、
ずっと食べられるサイクルを自分たちなりに作っているそうだ。

春に冬眠から覚める熊に注意しながら山菜を採り終えると、
手に持っていた袋いっぱいに山菜が取れていた。
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それを持ち帰り、食べられる様に下処理をする。

下処理は根っこあたりの薄皮を綺麗に剥いてから
土などの汚れを水で洗い流せば完了。
大量に採って来るので、剥く作業が一番手間がかかる。
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毎年山菜狩りをしているさとしは、
春のこの時期だけにしか採れない貴重なこの山菜を、
醤油漬けにして年中食べられる様にするらしい。

自分もつくり方を教えてもらって
こんなに美味しいものを独り占めするのではなく、
大量に作って家族や友達へのお土産にすることにした。
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他には炒め物や、味噌汁に入れたり、餃子に入れたり、
お浸しにしたりして色々な料理に使える。
IMG_3162(写真 行者ニンニクのレッドカレー)

味は名前の通りニンニクの香りがする。
ニラの様な食感とニンニクの香りがするこの葉物野菜。

またこれが美味い

ニンニクよりも10倍ほど栄養価があるらしい。
雪の下でじっと春を待ち、暖かくなると目を出し
1〜2週間のうちにグングン成長する。

その一番初めの生命力が漲った山菜は
体の毒素を外へ排出するデトックス効果があるらしい。

行者ニンニクは栄養素も高く
滋養強壮などスタミナ効果があるらしい。

これからもっと暖かくなってくると、
順にウド、コゴミ、ゼンマイ、たらの芽などが採れるのだそうだ。
それらの山菜がデトックス効果を発揮するらしいと、
さとしは山菜を採りに向かう山道で笹を掻き分けながら教えてくれた。

山菜を採ってからそのままの足で、
海や川に釣りに行くことも多々あった。
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川ではマスやイワナなどの川魚が釣れ、
海ではホッケなどをの魚を主に狙いに行く。
DSC_0111IMG_3097DSC_0112DSC_0006DSC_0003DSC_0007IMG_3118魚を釣り上げると、鮮度を保つために
すぐさま魚を〆て血抜きしたのち、内臓などを取る。

生でも焼いて食べられるが、
一夜干しにして、旨味を凝縮させるのもまた美味い。

もちろん、釣れるとその晩に魚や山菜を酒の肴に、
誰かの家に集まっては酒を飲んだのだった。
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雪山だけでなく、こういった楽しみ方を見つけ、
暇を持て余さない様に暮らすニセコの人達の
行動力と自然に対する知恵には感心させられた。
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山菜狩りと海釣りの他にはBBQも頻繁に行われる。
春から夏には、とても気候が気持ち良いので、
週の半分はBBQをしていると言う人もいるほど、
頻繁に行われているそうだ。
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クーラーBOXなどは必要無い。
そこらへんの雪で、冷やすことができるからだ。
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珍しいBBQに呼ばれた事もあった。
通年、ニセコに住む友達が自宅で飼っている羊(ニコちゃん)を
食べる事にしたらしく、
新鮮なジンギスカンを使ったBBQに呼んでもらった。
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独特な臭みがまた美味しいジンギスカン。いや、ニコちゃん。

今年、北海道ではやはりラム肉を食べる事が多かったが、
このラム肉。いやニコちゃんが一番美味しかった。

腐る直前まで熟成させた柔らかく、

臭みも程々な赤味の肉はビールが進む。

晴れた日は気温もちょうどよく、日陰だと少し寒い程度。
辺りはまだ雪に覆われた雪景色の中のBBQ。
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もう北海道へ来て5ヶ月が経とうかという頃になったが、
まだまだここには珍しい体験や新しい発見が沢山あった。

4月の終わりになると、そろそろ北海道を旅立つ準備を始めた。

ほぼ一年の半分ほどにもなる北海道での滞在だった。

そこにいればいるほど、
その土地を知り、その土地の人々と近くなっていた。
いっそのこと、夏も秋も滞在して一年通して
この土地を見てみたいとも思ったが、
そんなことをしていては、いつ日本一周が終わることやらわからない。
意を決して旅立つ決意をした。

ヒッチハイクで帰るために、
自分で持って行動出来るほどの荷物だけを残して
他は実家に送っておいた。

北海道を旅立つ前日。

Barの相棒くりちゃんは、春になって雪溶け水で増水した川で、
ラフティングガイドの仕事を始めていた。

毎年、春や夏にはこうした、ニセコや四国の四万十川で
ラフティングガイドの仕事に就いているらしい。

僕がラフティングをしたことがないと知ると、
「もっといろんなことを経験しておきな。」
そう言って、
川に連れて行ってもらえる事になった。

OLYMPUS DIGITAL CAMERAガイドのトレーニングがてらに
タダでボートに乗せてもらって川下りに参加。

急遽、お客さんが増えたのでその方たちと同行。
なんとも自由なラフティング会社

『武田屋ラフティング』
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ニセコでは雪溶け水で川が増水する時期が
ラフティングの一番シーズンらしい。

くりちゃんは、夏には四国へ仕事を移すそうだ。

武田屋ラフティングのみなさん、
お世話になりました。

皆さんもニセコでラフティングする際は是非、
こちらでやってみてはいかがでしょうか。

さて、ここから本題。

また新たな旅がいよいよ始まろうとしている中での
緊張感とワクワクする胸の高鳴り。

いつでもこの瞬間は、たまらなく楽しみで、怖くて、不安で。
色んな事が頭の中を取り巻く。

けれども。
それでもやっぱり前へ進む。

それでも進んできた結果が結局、今で。
やっぱりその『今』は、前に進んで来たから。

完璧な人間じゃないから
同じような事で悩んだり立ち止まったりする事もあるけど、
結局いつの間にか乗り超えるし、解決もする。

だから進もう。
とりあえず、やるだけやってみようと思える。

北海道でこれほどまでの経験が出来るとは
想像すら遥かに超えた体験だった。

厳しい冬が、ありとあらゆる生命を眠らせ、
蟲の声も、木々のざわめきも聞こえない、
静寂な深々とした世界。

特別な雪質を誇る山々の大自然。

冬に外国化するニセコの町並み。

日本人離れした考えを持つ、自由極まりない日本人達。

何もかもが新鮮だった。

もしこれから先、冬の季節に日本にいるのだとしたら

おそらく。

僕はここ、『ニセコ』に帰ってくるだろう。

なぜなら、まだまだこの土地の事を、
ほんの少しだけしか僕は、知らないと思うからだ。