12月8〜10日 ヒッチハイク珍道中(212〜214日目)

12月8日(212日目)

神戸から北海道へ旅立つ時が来た。

出発当日。

今回のヒッチハイクでの荷物は
大きな横長の円柱型の42ℓほど荷物が入る
ノースフェイスのスポーツバッグに
ある程度の着替えと寝袋2つ。
パソコンにカメラなどを詰め込み、
テントと調理器具は置いてきた。

温かい冬服や重たい荷物などは
先に北海道の仕事先に郵便で送ってある。

今回はキャンプ生活ではなく、寝袋だけの野宿となる。

神戸放浪中に友達の車に忘れ物をしてしまっていたので、
その友達が勤めている西宮市に忘れ物を取りに向かって、
昼をまわってから西宮にある高速の入り口で
ヒッチハイク旅を開始する事にした。

営業マンだった友達から忘れ物を受け取ると
車で西宮インターまで送って貰った。

道路脇に歩いて向かうと、
高速の入り口に吸い込まれるかの様なスピードで
走り去って行く車が目の前を走って行く。

インターの入り口で仁王立ちし、
両手にA4サイズの大きなスケッチブックを横に使って
走って来る車に、こう書いて向けた。

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『東へ』

第一投目はざっくりと。

正直、こんなやり方は始めての試み。

普段は隣の県などを書くが、
これ一枚で東京辺りまで行ければ面白いかなと云う想いもあった。

けれども、10分が経過し、
20分経ってもなかなか止まらない。

初めてヒッチハイクした16才の頃の感覚では
すぐに車が捕まると想像していたが、
簡単にそうはいかなさそうだ。

それもそのはずだろうか、もうあれから10年が経った。
風貌もヒゲも生えて髪も長く怪しく見えなくもない。
アラサーになってくると、
乗せてくれる方の判断の確率が減るだろう。

確かに10年前、16歳だった頃に乗せてもらった方々には
「あなたの様な年齢だから乗せたのよ。」
「もう少し歳をとっていたら考えたかもしれない。」
「若いからいいけど、おじさんだと怖いよね。」
などと言う声も確かに多々にあった。

30分が経ち、
一向に車は止まる気配がないので
もう少しだけ真剣に書き直す事にした。

たっぷり時間があるのなら続けるが、
今回に限っては一週間と云うタイムリミットがある。

真ん中に螺旋状の針金が通ったスケッチブックを開いて、
もう片方のページに「名神」と書き足した。
これの二枚を使って
「名神」「東へ」となり、より分かりやすくなった。

と云うのも。
その西宮インターの入り口からは
阪神高速と名神高速の分かれ道にもなっている場所でもある。
もし、阪神高速で東へ進む人が止まったとしても
断らなければならないのだ。

その効果もあってか、

それから10分も経たないうちにようやく一台目が止まった。
乗せてくれたのは歳がさほど離れていなさそうなお兄さん。
お兄さんは大阪府の豊中インターで行くらしく、
そこまで送って貰う事になった。
いつもならば乗せてくれた方の降りるインターの一番手前にある
パーキングサービスエリアで降ろしてもらうのだが
今回はそう云った場所が無いため交渉した結果、
インターを降りてから降ろしてもらう事になった。

早速、車に乗り込み大阪を目指す。

車内でも良く受ける定番の質問をされる。

お兄さん「どこから来たの?」

残念ながら一台目なんです…。
でも、今まで自転車で旅を続けて7ヶ月もの時間をかけて
四国一周や九州を周ったり、
夏の間は沖縄や石垣島などにも行って仕事をしてきました。

などと言ってこれまでの旅路を説明し、
記念にとステッカーを渡した。
すると、お返しにと名刺を頂いた。
お兄さんは神戸市東灘あたりで
イタリアンレストランのシェフをしているそう。
自分も三宮で、お店をやっていると話すと話は弾んだ。

やがて、豊中インターには20分程で到着し、
お礼を告げて車を降りた。

降り口から乗り口まで荷物を担ぎ歩いて移動。
さぁ、もういっちょやりますか。

…って。あれれ…??

関西空港線の車通りが多い
3車線の幹線沿いにあったインターの入り口。
一番奥の右車線は阪神高速に行く。
真ん中の車線は名神高速。
一番手前の歩道側に面する車道は
一般道に分かれる複雑なジャンクションになっている。
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…これは非常にまずい。

何故かと言うと、まず車通りが非常に多く、
車が停まるスペースなどこれっぽっちも無いこと。
それに止めたい車が真ん中の車線を走っている事だ。
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早くも最初の難関に出くわしてしまった。

試しにインター入り口付近でやってみたが、
停まれる場所が無くスピードが付いている車を停めようものなら、
後ろから追突され事故も起きかねない様な感じが見て取れる。

10分程で諦め、
今度はインターから一番近い信号がある交差点へ移動した。
ここならば、車全体のスピードは信号の変わり目などで
なんとか停まれなくもない。
しかし、ここも安全に停まれるスペースなどないのが難点だった。
けれど、その場所もほとんどの名神高速に乗る車は
ど真ん中の車線を走っている。
20分程粘ってみたがなかなか止まらない。

これは思った以上に深刻な難関だった。

どう考えても車が停まれるスペースが無ければ、
今までの経験上、車が停まる事はない。
信号の手前や過ぎた場所など色々試したが
すべて皆無の結果となった。

どうしようもなく、スケッチブックを畳み
荷物を担いで初めにやりヒッチハイを始めた
インターの入り口手前に戻ってきた。

こうなったら車道を歩いてインター改札口まで行く他はない。
そう思い立って、
改札口まで行けそうなのかどうか視察に向かった。

歩いて向かっていると、
歩道橋があったりジャンクションになって
見えにくかった先が見えてきた。

一番手前の左車線の一般道は左に反れて曲がった道になっており、
そのまま真っ直ぐに進む名神高速行き車線との間には
道路公団の建物が建ってあるほどのスペースがあるのが見えた。

…おぉ!
これはもしかすると…?!
逸る気持ちを抑え、
慎重にそこへ走って渡るタイミングを見計らった。

道路を渡り、
建物の陰で見えなかった向こう側を覗くと
思わずガッツポーズ。
さっきまで遠く感じた名神高速行きの車線が目の前にあり、
充分に車が停まれるスペースがある。
これで一安心、ここならどうにかなりそうだ。

道は200m手前からなだらかに左へ曲がり、
急なカーブに差しかかる手前に
停車することが出来る広いスペースがあった。
そこへ荷物を置き、
少し手前でスケッチブックを掲げてヒッチハイクを開始した。
急なカーブに差しかかるその場所はみんなブレーキを踏み、
左にハンドルを切っている。
こちらに気付き乗せてくれる人が居るとすれば
スムーズに停車することができる。
後は乗せてくれる人を待つのみだ。

やがて15分程で箱形の4tトラックの運転手が
こちらを見るや否や、助手席を指差して「乗る?」と
口で言っているのが見えた。
勢いよく大きく笑顔で頷くと、
トラックは急ハンドルを切って停車。
それと同時に車へ向かって走り、
置いている荷物を勢い良く担ぎ上げて
トラックへ走って向かっていた。

トラックに乗り込み助手席の後ろにある
4tトラックの大きさの車特有の大人一人が寝られるスペースに
荷物を置いて乗り込んだ。

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今回も乗せてくれたのは、
さほど歳は離れていない29才のお兄さん。
仕事で長野まで行くらしい。
まずは行き先をどこにするか決める。
長野まで行ければ距離も勧めていいのだが、
日本海側を進むと雪が降ると
高速道路が通行止めになる場所も多いと
運転手のお兄さんは教えてくれた。

元々の予定であった名古屋方面に進んで
東京辺りを経由し、東北自動車道で青森まで北上した方が良さそうだ。
お兄さんは、名古屋あたりから中央自動車道に乗り替えて
長野に北上するそうなので
その手前の一宮インターの近くにある
尾張一宮パーキングエリアで降ろしてもらう事にした。

大阪から走ること1時間程でもうすでに滋賀県を通っていた。

標高の高い山を見ると山頂辺りは雪が積もって白く見えた。

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早くも雪景色が目に入り、
北へ向かっていることを実感する。
大阪から名古屋までの間に、
やはり車内ではお互いに色んな話しをする。
良く聞かれる質問をされたり、時にはお兄さんの仕事内容など。

「やってみたいとは思うけど、
やりたいとは、なかなか思えないよね。」

お兄さんは不意にそう言った。

確かにそうかもしれない。
自分も昔はやりたいと思っているだけだった。
自分はこの生き方が絶対だとも思わないし言うつもりもないが、
人によっては家族や友達、仕事に嫁さんや子供。
優先すべき事は人それぞれだ。
その守りたいものが、やりたいことでもあるんだろう。
自分にとっては自分の
この『やりたいと願う心を守りたい。』

ただ、それだけなのだ。

夕方の5時過ぎに暗くなりはじめ、
名古屋の尾張一宮パーキングエリアへ到着した。
風は冷たく今夜も一層と冷え込みそうな風。

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なるべく早くこの時期の野宿を終えたい所だし、
移動手段を変えた初日の興奮もあってか、
寝ずにでも前へ進みたいと思っていた。
コンビニで安上がりなカップラーメンと総菜パンを買って、
手早く食事を済ませてすぐにヒッチハイクを再開。

外が暗くなればヒッチハイクの成功率はグンと下がる。
暗闇ではヒッチハイカーが車から見えにくい事と、
夜の暗さが人の心も暗くするかの様に、
なかなか車が捕まらなくなってしまう。

これは10年前でもそうだった。
色々とヒッチハイクの方法を工夫しなければならない。
まずは出来るだけ見えやすい様に明るい街灯の下で立ち、
掲げるスケッチブックを左手に持ち、
右手には明るいLEDライトを持って、
書いている文字を照らす。
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ぼーっと突っ立っているだけでなく
「お願いしますっ!!」
そう言わんばかりの明るい仕草で
スケッチブックを通る車達に向けて行く。
スケッチブックには『東名高速』と書いた。
そこから先へは
色んな高速道路へ行くジャンクションがたくさんあり、
中央自動車道、東海環状自動車道、
名古屋高速1号、6号線。
様々な高速へ乗り換える車がいる為に、
今回はターゲットを絞ろうと高速道路の名前を掲げた。

1時間が経ち、2時間ほど立ち続けた。
ようやく、一台のセダンが目の前に止まった。

まずはどこまで行くかの交渉。

おじさんが向かう先は距離が短く、
名古屋インターで降りてしまうそうだ。

一度インターを降りるとこれがまた苦労する。

出来るだけサービスエリアか
パーキングエリアでヒッチハイクする方が捕まりやすい。

けれど、それらは
名古屋インター手前までの道には
またしても無い。

高速の入り口は
どんな場所がが待ち受けているかわからない。

先ほどの豊中インターの様な
ヒッチハイクが難しい場所の場合もあるのだ。
暗くなっては余計に困難になる。

だが、2時間粘ってようやく止まってくれたんだ。
これも何かの縁。

乗せてもらって
名古屋インターで降ろしてもらう事にした。

おじさんはヒッチハイカーを見かけることはあっても、
乗せたのは初めての事だったそうだ。
おじさんも車を走らせている途中に不意に呟いた。

「キミはいいね。会社を辞めていいよ。って誰かに言われたら
すぐに会社を辞めちゃうだろうなぁ。本当に羨ましいよ。」
何かを諦めたとも取れる声でそう言った。

確かに40年や50年培ってきたものを
覆す事は到底、難しい事だろう。
自分の心の中で、本当に受け入れられてからこそ
変化は受け入れられるものでもある。

おじさんは、
そうする勇気が無いだけなんだ。
出てしまえば、やる気になれば何だって
その時に出来るはずだろう。
要はやり方だ。

とは言うものの。
僕にはいま、養う嫁や子供、
介護が必要な親なども居ないし
何の責任も無い。

そう云った、大切な人に対しての責任が無い
今の若い時期にこそ
自由にこうやって出来るのかも知れない。

先にそれらを選んでしまえば
こんな事が難しいことなのは明らかだ。

逆に言えば、
大切な家族や愛する奥さんを既に持っている
おじさんは既にそう生きると決めた瞬間があったのだろう。

人生の分岐点である大きな決断とは
これからの人生を決定的に大きく左右するもの。
23才の頃に会社のデスクの上で
この生活をすると決めてから4年が経った。

これで良かったのかも
まだ自分でも分からない。

おじさんも、若い頃に決断した事を
不安に思っているのだろうか。

どちらにしても。
その不安には打ち負かされない決断を。
あの時、あぁしてたらなぁ。などと
ならないようにも。
日々、前を向いていたいと思う。

ふと、そんな事を考えつつ
名古屋の平たい盆地の景色を眺めていた。

20分程で名古屋インターへ到着。
おじさんにお礼を告げてヒッチハイク出来そうな場所へ移動。
インター出口から道路を横断して
高速道路の入り口側へ足を向けた。

入り口の位置を確認して愕然としてしまった…。

まただ。

3車線ある大きな道路の歩道から一番遠くの右車線が
高速の入り口だったのだ。

歩道からヒッチハイクをして
果たして捕まえることが出来るのだろうか?
時刻は9時前になり、より一層と難しい時間帯になっている。
高速の入り口から距離をとって500mほど手前の方に向かい
ダメもとでヒッチハイクを開始した。

高速に乗る右車線の車は、
車通りが少ない夜の国道を勢いよく猛スピードで走り去って行く。
全く止まる気配などない。
こっちに気付く人も少なく見て取れる。
パーキングやサービスエリアならベンチの一つや二つあって
いつでも寝ることが出来るが、
街に降りてしまえばそういった場所を探すのも困難だ。
今夜は徹夜を覚悟で、何としてでも高速道路上に戻っておきたい。

初日にして最大の難関を目の前にしながらも、
怯むこと無く『静岡』と書いたスケッチブックを持って立ち向かった。
何台も何台も勢い良く高速へ向かって車が走り去ってゆく中を
ひたすらに黙々とアピールをする。

1時間程が経ち、
心もそろそろ折れそうになった頃。

一台通り過ぎた車が引き返して戻ってきて
立っている後るに位置する裏道から出てきて
こちらに向けてクラクションを鳴らした。

荷物を担ぎ上げて向かってみると
声をかけてくれたのは若い女子二人組だった。

「どこまでいくんですかー?」
とりあえず東名高速に乗りたいんだけど、
最終的には北海道に行きたいね!
そう言うと「えぇー本気の人だぁ〜」
「ちょっとそこまでなら乗せたんだけどなぁー。
てゆうか、そんな人見たの初めて〜!」
だとかなんだ言って
二人はキャッキャ言って盛り上がっていた。

ヒッチハイクなんてやった事が無く、
少し一緒にやらせて欲しいと頼まれた。
快く迎え入れると
えりさとゆり子と名乗る23才の女子二人と
ヒッチハイクをする事になった。
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女子がヒッチハイクするとなると、
こちらとしても、ありがたい。
女の子がヒッチハイクすると車が止まってくれる確率は
大分と上がるだろう。

16才の頃にもこれに似た経験があった。
あれは確か、北海道は札幌の街中付近。
そこでヒッチハイクをしていると、
ディズニーランドの中でもないのに
ミッキーとミニーちゃんの耳を頭に付けた、
いかにも見た目が痛いギャル2人に声をかけられて
車が捕まるまでの間手伝ってくれる事になった。

女子達の手伝いもあって一台の車が停まったが
停まってくれたのは
現役ホストのチャラチャラした男だった。

あっちゃー。
これもチャラチャラ女子の効果か…?
そんな事も頭に過りつつも仕方なくそのホストの車に乗った。
目的地まで送って貰っている途中。

ピカーーッ !!!

いきなり激しい光に包まれた。

運転手のチャラ男がスピードの出し過ぎで
オービス(速度超過探知機)に写真を撮られてしまったのだ。

それからと云うもの、
ホストのチャラ男が不機嫌になり、
運転を辞めて車を路肩に止めて知り合いに電話をし始めた。
「オービスって光ったらどうなるの??」
「えぇ、マジで?そんなに罰金くるの?マジかよぉ…。
はぁ…チッ。なんで良い事してんのに
こんな目に遭わなくちゃいけねぇんだよ…チッ。」
そんな話しを横でされ、とてつもなく気まずい想いをした。

なんて苦い経験もまだ鮮明に覚えている。

話しは戻り、
女子二人と車が捕まるまでの間。
今までは自転車で日本を周って居た事や
これからの目標など色々話していると、
今夜はどうするのかと聞かれ、
何も決めて居ないから最悪の場合は
そこらへんで寝れそうな場所を探して、
寝袋だけで寝るよと話すと
「えぇ〜それならぐっさんちに一緒に行かない?」と
突然に知らない名前を
さも知っているかの様な口調で誘われた。

ぐっさん?あぁーぐっさんねぇ。
どうしようかなぁ…
って、ぐっさんって誰だよ。

話を聞けば、
その子達の昔からの仲が良い男友達だそうだ。
「ぐっさんもお兄さんと気が合いそうな人だし
絶対迎え入れてくれると思うよ!」
そう言いながら女子達はぐっさんに電話をし始めた。
「ねぇねぇぐっさん?今私たちヒッチハイクしてるんだけど〜、
それでね!今さ、日本一周してる人と居るんだけど
今日その人と一緒にぐっさんの家行っていい?
え? わけわからないって?なんで〜いいじゃん!」
そんな会話が聞こえた。

そりゃそうだ。
そんな事をいきなり言われても
訳が分からないのも当然。

結局はぐっさんから連れてきても良いと云う話しになったらしく
夜10時までヒッチハイクをして捕まらなければ、
そこへ行かせてもらう事になった。

車は一向に停まる事はなく
10時を過ぎた頃にヒッチハイクを諦めて、
まだ見ぬ、ぐっさんの家に向かう事になった。

名古屋インターからさほど遠くない住宅街に向かい、
15分程でぐっさんの家に到着。
ぐっさんはいきなりの出来事にも関わらずに
快く迎え入れてくれた。

一人暮らしの男らしい、散らかった部屋だった。
入り口付近のゴミゴミした家に、
足の踏み場を探しながら入る。

ある程度のお互いの自己紹介をを終えると
さっそく乾杯でもしましょうとぐっさんは
散らかった部屋に似合わないお洒落なシャンパンを出してきて
酒を振る舞ってくれた。
彼はバーテンダーとしてアルバイトをしているらしく、
様々なリキュールなども部屋に飾ってある。
ぐっさんとえりさとゆり子の三人と乾杯を交わし
酒盛りが始まった。
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1時間ほどシャンパンを飲みながら話していると、
やがて話しの中で「冬になったら鍋がおいしいよね。」
そんな話しになり急遽、
鍋パーティーを開いてもらえる事になった。

3人と近くのスーパーまで買い物に行き、
鍋の食材やビールなどを買ってくると
きったないぐっさんの家を移動して
女子の家に招き入れられ鍋パーティーが始まった。

晩ご飯はインスタントラーメンと
菓子パンを食べただけで、物足りずに腹が減っていた。
願っても無い出来事に感謝しつつも、
4つほど年下の名古屋っ子達と
コタツに入って鍋をつつきながら色んな話しをした。
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自分と出会った事で、
出会った人にとって良い方向へ行ける存在でありたい。
そんな想いからいろんな今までに経験してきた話しや、
それによって芽生えた想いを伝えた。

それを伝える事でまた、彼らとの距離も縮まった様に感じた。
酒もどんどんと飲んでいると眠たくなってしまい
コタツでそのまま眠りに落ちたのだった。


12月9日(213日目)

翌朝。
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二日酔いはもちろんの事。

彼らの家を出てから3人に別れを告げて
高速の入り口まで送り届けてもらった。

昨晩の名古屋インターではなく、
そこから1kmほどのすぐ近くにある
本郷インターの入り口まで。

名古屋インターとは違って、
今回のインターは歩道側の一番手前にある左車線。
停車出来る様なスペースもあり、
どうにかヒッチハイク出来そうだ。

朝の通勤ラッシュの中、
朝7時頃に2日目のヒッチハイクを開始。

今回スケッチブックには静岡と書いている。
仕事に行く忙しい人が多いからか、なかなか車は停まらなかった。
あれ…?おかしいなぁ。

もう既に1〜2時間が経過し、
なかなか朝の時間に停まる気配がない事に苦戦する中。

突然、電話が鳴った。

相手はこれから冬のシーズンお世話になる
北海道ニセコにあるBarのオーナーから。

電話に出てみると
「15日のオープンに合わせて
仕事の流れなどを教えたりしたいから、
出来るだけ早くに北海道の店に来れない?
2日後の金曜日にもう一人のスタッフも来るので
その時に合わせてこれたら一番いいんだけども。
今日は9日であと残り一週間も無いけど、何処に居るの?」
日本語を流暢に話すアメリカ人のジェリーさんから
なかなか到着しないので心配と確認の連絡だった。
「えぇ、まだ名古屋?!
名古屋から6日間で本当に北海道まで間に合うの?」
少しオープン一週間前を控えたジェリーさんは心配そうだった。

心配かけてすいません。
どうにか早くそちらに着ける様に考えます。
そう返事をして電話を切った。

ふぅ…。
通勤ラッシュの車通りが多い高速の入り口に
吸い込まれてゆく車を眺めながら
大きく深呼吸。
さて、どうしようか?
今日は、9日。

12日までに行ければ何も迷惑はかからないが
このままヒッチハイクで賭けの様な事をしてて良いものだろうか?

仕事の段取りなども考えると、
確実に3日以内に行かなければならない。
6日後のギリギリに行くと云うのも失礼に値するだろう。

昨日の目標は東京まで行っている予定が
名古屋止まりだった事もあるし、
ここから先へは北に行けば行くほど
雪が積もっている土地に差しかかって
状況は余計に困難だ。

色んな状況を考えると、
イチかバチかではなく電車か飛行機で、
すぐさま北海道に移動した方が良さそうなのは明らかだ。

残念ながらヒッチハイクでのお遊びは
中断せざる追えない状況だった。

移動手段をヒッチハイクから交通機関に切り替えるとして、
どの手段が一番最安値なのかを
その場で手持ちの携帯を使い検索し始めた。

当日に飛行機で行こうとすれば4万円以上もする。
新幹線や電車で探してみても1万8千円の料金が必要で
寝台特急を利用しても翌朝の9時北海道に到着となっている。
資金的にはもう底を尽き始めていた。
極力、安い値段で行きたいのは確かだ。

とにかく名古屋インター付近では
新幹線も飛行場も無い。
とにかく名古屋の市街地へ移動する事にした。

高速のインターから歩いてすぐ
名古屋市営地下鉄の本郷駅まで向かい
300円の名古屋駅行きの切符を買って電車に乗り込む。

その移動している間に
様々な移動手段で安くいける方法を模索していた。
現段階で調べた限り飛行機では
やはり2万円以上が相場で電車が固いだろう。
そんな事を考えていると電車は名古屋駅に到着した。
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名古屋の中心街に降り立ち、
すぐさまチケット屋へ足を向けた。

電車最安値と言えば『青春十八切符』
5枚の一日乗り放題乗車券を1万1,850円で購入し
電車を乗り継いで向かう事にした。

何度も乗り継がなければならないのが面倒だが
最安値はこの方法以外にないだろう。

一先ず。
北海道までの行き方を
路線に詳しい駅員さんに聞く為、駅構内へ戻ってきた。

改札口に居る駅員に話しかけ、
ここから先の道程をどうすれば良いか訪ねると、
驚きの返事が返ってきた。
「青春十八切符で向かうの?それは明日からしか使えないよ。」

なにーーーーーっ?!

青春十八切符に期間があるなんて事は知らなかった。
主に夏期は7月20日〜9月10日までと、
冬期が12月10日〜1月10日までと決まっているらしい。
一年中使えるのではないのか、、、

また振り出しに戻った。

明日まで待つか、
それとも他の方法を考えるか。

インターネットを駆使して他の術を探すと、
翌日の飛行機の便を調べたら、
なんと破格な激安航空券を発見。
8,700円と云う破格値。

当日と翌日ではそれほどまでに差があるとは驚きだった。

飛行機で簡単に向かう事が出来て、
更に電車より安いとなると
当然。その方法で行く事に決めた。

まずは、青春十八切符のチケットを返品に向かった。
無事に返金してもらってから、
飛行機のチケットの空席があるのかも問い合わせすると、
席の残りがわずかで12,950円と少し料金を上げて提示されたが、
それでもまずまずの安さ。
一日中乗り換え続けの電車と変わらない値段で、
明日出発の朝9時の便で昼前には北海道へ到着し
明日中にニセコに到着出来る。

あとは明日の飛行機に乗るまでの時間を、
この名古屋でどう過ごすかとなった。

ここまでの7ヶ月間の旅路で名古屋に少し宛はあった。
夏に石垣島で滞在していた時に仕事先が同じで仲が良くなった
名古屋出身の酒乱えみこ姉さんが、
昔に働いていたBarがあると良く聞かされていた場所だった。
「名古屋に行く時は是非寄ってみて欲しい。」
と言われていた事を思い出す。

そこへ訪ねて行こうと決め、
それまでの時間は街を歩いてみたりしたが、
背中に大きな荷物に、胸にもリュックを背負ってる。
大荷物であまり行動範囲は広く動けない。
IMG_4146少しオフィス街の様な町並みを歩いたけれども
何だか面白みが無く、つまらなくなってきたので
マンガ喫茶へ入り、夜までの時間をゆっくりと過ごす事にした。

溜め込んでいたブログ更新を主に作業して
漫画喫茶を過ごしていると
辺りはあっと言う間に暗くなり、時刻は7時を過ぎていた。

そろそろ目的のBarへ向かう事にして、
近くの名鉄名古屋駅へ移動した。
電車に乗り20分程で名古屋市の緑区にある有明駅に到着し
酒乱えみこ姉さんから聞いた住所を宛てに、
歩いて30分程の距離のBarを目指す。

辺りはすっかり暗くなり、
都会と言うよりは住宅街が広がるベットタウン。

外の気温は肌を突き刺す様な冷たい風が吹き、
身体を自然と縮こまらせた。

もうそろそろ、噂のお店に近くなった所辺りで
印象的なゴリラの看板の写真が目に入った。
ここの地元の人なら一目でわかる物だろう。
おそらく分かるだろうと思い
えみこ姉さんにその絵を写真に撮ってメールで送りつけた。
IMG_4151

やがて、Barの目の前に到着。
建物の横にあるスロープ階段を上がった2階が
そのお店の様だ。

先ほどの写真を見た姉さんから
返信が帰って来た。
「つい最近まで石垣に居たアンタが
そこに居る事が不思議で仕方ないよ。」
自分も、えみこ姉さんがこの土地で過ごし、
あの人が見慣れた土地に居る事も不思議で仕方ない。

石垣島を出てから2ヶ月。
明日には北海道の土地へ足を踏み入れている事だろう。
非日常な僕の日常生活は、まだまだ続いてゆく。

お店のドアから何やら店長らしき人が出てきて、
看板を出しオープンの準備をしているのが見えた。

電話をしながらこっちを見て
「あぁ、いるいる。なんか怪しいヤツ居るね。多分この人だわ。」
そう言っているのが聞こえた。
電話の相手は確実にえみこ姉さんだろう。
「えみこの友達?」
二階からそう聞かれ、店に招き入れてくれた。
オープンして間もない噂のBar Brassへ入る。
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店内は広々とした30人程が座れる席数があり、
ご飯も食べられるレストランBarになっている。
カウンターに座りビールを注文して、
声が渋いのが印象的な店長のカズさんと話していると
えみこ姉さんの友達がやってきた。
その友達のりょうさんもえみこ姉さんから電話が来て
わざわざ会いに来てくれたのだそうだ。
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そして姉さんは泊まる場所も無いだろうから
泊めてやってとお願いしてくれていたのだった。
姉さんの心配りに感謝しつつ、今夜の寝床も決まって一安心。
心置きなくBarで過ごす事が出来る。

りょうさんも週に数回ほど
Brassのスタッフとして働いているそうだ。
腹が減ったのでピザを注文して赤ワインを二杯ほど飲み、
3人であれこれ色んな話しをした。
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空港までの交通手段を教えて貰い、
翌日の飛行機の便が11時45分。
空港まで電車で向かう事などを計算すると
朝の8時には起きて行動しなければならない事がわかった。
もう少し長居したい気持ちもあったが、
明日の飛行機を逃してしまうと
変更不可のチケットがタダの紙切れになってしまう。
何としてでも無難に行くには充分睡眠をとって
朝早くから行動をしていたい。

名古屋へは来年の秋頃に通過する予定なので、
その時にまた訪れさせてもらう事を伝え、
0時前には店を出た。

りょうさんの家は、歩いて行くには程遠い距離で
原付バイクで来たそうだ。
バイクでは二人帰れないので一度、
店長のカズさんに車を借りてりょうさんの家まで送って貰い、
またりょうさんだけが車をBrassに返しに往復して
バイクを乗って帰って来て往復してくれる事になった。

りょうさんの家に到着。
1LDKの広々とした家に入ると、
バイクを取りに行っているあいだに
「風呂でも入ってゆっくりしといて」と言って、
風呂の使い方などを説明してから
バイクを取りに再び外へ出て行った。
わざわざ湯船に湯も張ってくれる気配りまで
親切にしてくれている。
風呂に浸かって、リラックス。

風呂から上がってテレビを見ていたが、
なかなかりょうさんは帰って来ない。
あそこのスタッフだと言うこともあるし、
お客さんに捕まっているんだろうか…?
そう思っているうちに
いつの間にか地べたで眠りに落ちていた。


12月10日(214日目)

翌朝、目覚ましが鳴る前に目が冷めた。
りょうさんもいつの間にか帰って来ていた様で
ベットで眠っていた。

やがて間も無く目覚ましが鳴り、
二人とも起床。

りょうさんの家から駅まで送ってもらい、
IMG_4159地下鉄の徳重駅に到着。

りょうくんと固い握手を交わし、
来年の名古屋での再会を約束した。
地下鉄の駅へ入って行った。

徳重駅から新端橋駅で乗り換え、金山駅へ向かう。
金山駅は名古屋駅から3つほどの位置になり、
少しのあいだ逆戻りして
空港行きの電車に乗らなければならなかった。

地下鉄の金山駅から名古屋鉄道に乗り換えて
中部国際セントレア空港へ。

電車内では、今日の昼頃には北海道へ降り立ち、
空港からバスに乗りニセコへ着くと
これから働く餃子Barへ到着していて、
これから数ヶ月間ものあいだお世話になる
アメリカ人のジェリーさんに挨拶している…。
などといろいろ考ええていると
ワクワクは更に膨れ上がり、
見知らぬ環境へ移る緊迫感の様なドキドキがあった。

おおよそ1時間半で空港に到着。
出発時刻の2時間前で時間には余裕がある。
チェックインをすぐに済ませて朝食を頂く事にした。

広々とした綺麗な清潔感のある空港を見て回り、
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手軽にラーメンを食べてから
近くにあった免税店のユニクロへ入って見ると、
温かい服をもう少し揃えようと
裏起毛の風を通しにくいナイロンのズボンと
ヒートテックのアンダーシャツ、
それにトレーナーを購入。

極寒の地、北海道への対策を
充分にしてから飛行機に乗り込んだ。
IMG_4165

機体は名古屋の地面から浮き上がり、
一気に上空へと重力に逆らって上がって行く。
IMG_4166一度、埋立地の空港から海へ飛び立ち
大きく重圧をかけながら旋回し内陸へと航路を取った。
窓側の席から外を眺めていると、
自転車旅をしていたのならあの場所を選ぶだろうな。
などと、いつもの道選びを考え初めていた。

岐阜の山に差しかかった辺りで白い山々が転々と見えてくると、
IMG_4167その後、あっという間に
真っ白な山々だけの景色が見え始めた。

当分これから春まで雪景色が続くのだろう。
緑も無ければ茶色い土を見る事も無くなるのだろう。
そんな経験した事の無い世界に飛び込む気持ちは
いつでも新鮮な気持ちにさせてくれる。

およそ2時間と言う速さで
飛行機は札幌市の千歳空港へ到着した。

時刻は昼の1時過ぎ。

自転車旅で2時間走っても
およそ20km前後ほどが限界だ。
おそらく名古屋も出られないだろう。

けれども、そこに行くまでに起きるのドラマ数々が
自力旅の良いところと言えるだろう。

今回、お金を出して移動した中では
やはり出会いもなく、ドラマも生まれない。

預けていた荷物は
大きな回転寿しの様な機械で流れて出てくると、
自分の荷物をお腹と背中に担ぎ上げ
今度はニセコ行きのバスを探し始めた。

空港のインフォメーションで
ニセコ行きのバスの受付の場所を聞き出し、
バスの切符を買いに向かった。

受付で値段を聞くと
片道4000円ほどと、そこそこ割高な値段。
出発までは30分。
ちょうど良いタイミングだ。

切符を買ってから一度外へ出てみた。

空気は凛と澄んで乾き、
道路の測道に10cmほどの雪が積もって
早くも北海道らしさを見せてくれた。
気温もおそらく0度前後で本州と比べれば、
5度前後だった名古屋よりも、
もちろんより寒く感じられた。

出発の時刻になり、
バスに乗り込むと後はもう
今シーズンの最終目的地への到着を待つだけだ。

右側に窓がある奥手の席に座った。
バスの中では窓から見える雪景色を眺め
ひたすら真っ白な景色が左から右へ流れていく。
景色にもだんだんと馴れて来ると
宮崎で何気なく買っておいた本を読んで過ごしたりしていた。

途中のトイレ休憩でバスは一度だけ停車した。
IMG_4169北海道上陸祝いとして
売店に売っていたサッポロビールを買って飲んだ。
IMG_4170
15分ほどの休憩中に一本を飲みきってしまうと、
もう一本買い足してバスの中で雪景色を眺めながら飲む。
とてもリラックスしながら飲んでいると、
ふと気がついた。
「あ、これからお世話になるジェリーさんに挨拶するんだったな…。」
ちょっとほろ酔い気分で初対面になってしまうが、
仕方あるまい、時すでに遅し。
何てったって自由の国、アメリカの人だし、
そんな事を気にする様な人では無いだろう。

バスに乗ってから3時間ほどでニセコへ到着。
辺りはすっかりと暗くなっていた。
ゲレンデからすぐそばにある
ヒラフウェルカムセンターへ降り立った。
辺り一面真っ白な銀世界。
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すぐそばにあるゲレンデには
オレンジと白の明るい照明で照らし出され
遠くで小さくスキーやスノーボードを楽しんでいる人が見える。
DSC_0007

道路の測道には
空港よりも遥かに多い雪が
膝を越える辺りまで除雪によって積み上げられていた。

ジェリーさんに連絡を取ると
到着した場所から100mほど坂を下った場所が
これから働き、寝泊まりする場所だということがわかった。

外の寒い気温に酔いも一気に冷めて、
防水対策など一切していない滑りやすい靴で
転げない様に慎重にその場所まで向かった。

DSC_0012

オープン6日前を迎えた店の中で
店内の片付けなどをしているらしく
まずは一階のBarへ向かう。

店の小窓からジェリーさんらしき人が見えた。
濃い赤色に塗られた木の扉を開けようとするが鍵がかかっている。
小窓から控えめにノックしてみたが
中の音楽が大き過ぎてなかなか気付いてくれない。
今度は少し大きめに叩いたり手を振るなどして
中から見えやすい様にアピールすると
ようやく気付いてくれドアの鍵を開けてくれた。

石垣島で同じ宿だったさとやんに紹介してもらい
電話を掛けた2ヶ月越しの対面だ。
初めまして。
これからよろしくお願いします!
そう言って固く握手をした。

ジェリーさんも流暢な日本語で
「こちらこそ、よろしくね。」
そう言って笑顔で迎え入れてくれ、店内を見させてもらった。

店内はなんとも不思議な空間だった。
黒地の壁には中国の漢字が沢山書いてあり
バーカウンターの中にも中国を連想させるものが多数。
DSC_0134

基本的には中国テイストな店の雰囲気。
けれども、中国風のものが多いが
揃えられているみたいでもなさそうだった。
DSC_0036

店を入ってすぐに右手からカウンター7席があり、
左手にポールダンスが出来る様になっている。
DSC_0051

8人ぐらいが座れるソファーに
外人のトップレスのヌード写真が沢山張ってある
エロさ丸出しの部屋。
DSC_0057DSC_0056かと思えば、
隣の部屋は先ほどの空間より倍ほど奥行きがあって、
一番奥の空間は店の中で唯一
靴を脱いで小上がりになっているスペースがあり
真っ赤な中国を連想させる敷布団や座布団が所狭しと敷き詰められて
寝ながらでも使えそうな
足のくるぶしほどの高さの小さなテーブルがある。
DSC_0153

手前の空間は左右に分かれていて、
左側はベンチの様な横に長イスに
中国風の座布団が敷いてある4人掛けの席。
DSC_0168 右側は向かい合って座れる2人席。
テーブルにはエロマンガが張り巡らされている。
またしても、さりげなくエロが組み込まれている。
DSC_0163

カウンターを過ぎて、奥の空間にも
L字のソファーが置いてある4人席があり
その壁一面にエロマンガが貼り巡らされていた。
テーブルにもエロマンガが先ほど同様に貼り巡らされている。
全部で客席は33人ほどが座る事が出来るお店のようだ。
DSC_0194

な…なんだこの斬新なお店は…!!

店内を一通り見終わると
ジェリーさんは「どう?気に入った?」と言って
自信満々に聞いて来た。

えぇ、もちろん!!

こんなBarは未だかつて見た事がなかった。
なんだかよくわからないけども、
斬新でとてもカッチリとした場所では
なさそうなのはすぐに分かった。

酒でも飲むかと誘われ、もちろん。
なんなら、すいませんけどもう飲んで来てますよ。
そう思いつつも、
メーカズマークのバーボンとコーラを割った
バーボンコークを作ってくれて乾杯。

ジェリーさんはとても気さくな人で、何だかほっとした。
歳も34歳と若く、奥さんは自分と同年代の方だった。

わりと近い年代でもあり、
想像していたより若く親しみやすそうな方だったのが
始めて会った時の印象であった。

それからスコッチウイスキーが大好きなジェリーさんの
オススメのスモーキーな香り高いウイスキーを勧められ
ストレートで数杯飲見ながら
店内でカウンターに座りながら
お互いに色んな話しをした。
ジェリーさんは大学の時に熊本大学に留学して来てから
17年ほど日本に住んでいてるので
ほとんどの日本語を理解していて会話には全く不便はない。
これからの仕事について少し飲みながら聞かせてくれた。

中国風の店内に合わせて変わり種の餃子3種類を出すらしい。
チキンカレー餃子に豚キムチ餃子、蒸しエビ餃子。
他のフードメニューは豚汁に、ご飯が
唯一のこの店での食べ物メニューにするそうだ。
この店内の内装はジェリーさんの知り合いでもある
前オーナーが手がけた物らしい。
その前オーナーは昨年にカイトサーフィンをしていた最中に
強風に煽られて落下事故に遭ってしまい
半年以上も眠ったままの状態が続き奇跡的に目が冷めたが
脳に障害を患い記憶の大腿部を失ってしまっていた。

そんな出来事もあって、
今年からジェリーさんが引き継ぐ事になったのだそうだ。

ある程度のここにまつわる話しを聞きながら、
今度は二階のリビングスペースへと案内された。
二階から上は木造のロッジになっており
30人前後が宿泊出来る部屋などがある。

大きな広いリビングへ足を踏み入れるとリビングの中心に
丸く薪暖炉を囲む様に小下がりになったスペースがあり
8人ほど座ることが出来るなオシャレなソファーが目に入った。
DSC_0078

天井へは煙突が突き抜け3階の廊下の手すりと廊下が見える。
開放感のある空間だ。
隣の部屋の角には小上がりになった座敷。
10人ほどが座れる掘りごたつ式の形をしたテーブルがある。
後ろの大きな窓ガラスからはニセコ比羅夫のスキー場が見える。

更に隣に食卓となる20人ほどが座れる長い木のテーブル
DSC_0076
そのすぐそばに大きな業務用サイズのキッチン。
DSC_0079

キッチンで1才に満たない男の子を抱えた
ジェリーさんの奥さんのともちゃんと、
ロッジのお客さんへの料理やBarで出す餃子を作ってくれる
イタリアンのシェフでもあるあっこさんが居た。
「あら、無事に到着したのね!これからよろしくね!」
そう言って二人とも出迎えてくれた。

ジェリーさんは更に奥に突き進み、
これからの住居となる屋根裏部屋へ案内してくれた。
キッチンを越えてスライドドアを開けると、
そこからはスタッフのみの住居スペースになっている。
DSC_0080
その部屋から伸びるハシゴ階段を上がった所が
これから住む住居になるそうだ。
「なんか、忍者屋敷みたいだよここは。」
ジェリーさんがそう言いながらハシゴを登り案内を続けてくれる。

直角の階段を上がると左に廊下が延びてあり、
本当に忍者屋敷を思わせる様な棚に見せかけた扉を開く。
DSC_0083
少し低い天井に姿勢を屈ませながら扉を抜けると、
右に曲がるL字型の階段を6段ほど上がった場所に屋根裏部屋があった。
DSC_0085

おおよそ20畳ほどの横長の部屋があり、
ちょうど部屋の真ん中から上がってくる様になってある。
天井は屋根の傾斜に沿って傾き、
一方は腰を屈めなければ立つ事は難しい高さ。
そこへ案内されると、その部屋を一目で気に入った。

部屋から見える景色には
屋根の淵から氷柱が何本も見え、
他の窓からはゲレンデの雪景色が見渡せる。
DSC_0014
もしかするとルームシェアになるかもしれないと聞かされていたが、
今年は自分一人で住めるそうだ。
広々とした空間を独り占めで生活する事が出来て、
今年の冬期は文句無しの住まいを手に入れられた。

これから始まる北国での生活が
より一層と楽しみになって
期待に胸を膨らませずには居られなかった。

そうして。
忍者屋敷の様な屋根裏部屋での
雪山生活が始まった。
DSC_0088

11月28〜12月7日 神戸に『寄る』の巻。 (202〜211日目)

神戸の自宅に自転車を置きに寄ってから。

彼女の誕生日のサプライズまではあと3日。
友達の家などにお邪魔させてもらって
ひっそりと神戸で過ごしていた。

4000kmもの距離を自力で旅をして
久々に顔を合わす友達たちに再会。

どんなに自分の身の回りに色んな事が起こったとしても
昔からの付き合いの友を目の前にすると
何一つ変わらぬ自分がいて。
いつもの様に相変わらず迎え入れてくれる仲間達がいた。


12月2日(206日目)

押入れの中にケーキを持ってひっそりと。
その時を待った。

今日は彼女の誕生日。
内緒で神戸に帰ってきてから初対面。
どんな反応をするだろう…?

「誕生日プレゼント欲しい?
押入れにあるから取ってきてよ。」

友達が彼女に向けてそう言うと
静かに手に持ったケーキのろうそくに火をつけた。

近づく足音は押入れの前で止まり
扉が開いた。

ガラガラガラ…

「え”ぇーーっ?!!」

彼女は驚きのあまり飛びついて来る

と、思いきや。

バンッッッッ。
勢いよく扉を閉めた。

いやいやいやいや…なに閉めてんだよ。
そう言いながら扉を開ける。

もう、どっちが驚かされたかわからない状況だ。

押入れから出ると、
涙もろい純粋な彼女の目からは涙が出ていた。

なんか、想像していた感じとは全然違ったが、
なんとかまぁサプライズは成功したようだった。


とは言うものの、
その彼女とは色々あり
北海道に来てからお別れする事になった。

そんな事もあり、
この事をどう書いて良いかわからなかった。
けれども、よくよく気持ちを落ち着かせて考えると
自分はノンフィクション作家として生きていく上で
隠し事はなく、表も裏も無しにまっすぐに。
これから生きて生きたいと思った。

自分自身の行動で引き起こすこれからの出来事は
これからもずっと自分の作品となる。
もし、自分の人生が作品になるのだとすれば。

やっぱり、いつもどんな時でも
胸を張っていられるような生き方でありたいと思う。

自分自身を褒めてあげられるように。

自分自身を尊敬できるように。

自分自身を愛せるように。

自分自身をよくわかっている自分を愛せないのであれば
自分とは全く違う他人など愛せるはずもない。

別れた彼女とは今でも仲良くさせてもらっている。
今となっては次の日の出来事は、
二人の中で一番の笑い話しになった。

12月6日(210日目)

翌日、神戸を出る最後の夜に
夜遅くまで飲み明かし、店を出た時の帰り際。

二人とも随分と酒を飲んで酔っ払っていた。

神戸滞在中では、経営しているBarで
一時帰郷イベントなどを開催したりで忙しく
彼女と過ごせる時間もほどほどにしか
作ってあげる事が出来なかった。

そんな寂しさと、酔っ払った勢いからか、

「なんで3日前から神戸に居たのに隠れてたの?
友達と会いたかっただけでしょ!!」
などと、ワガママなのか妬みなのか
ワケの分からない文句を言われた事が原因で
喧嘩になってしまった。

自分としては九州でサプライズをすると決め、
日々、誕生日に間に合うようにと必死に自転車を漕いで
いくつもの山々を越えてここまでやってきて
なに文句言ってんだコノヤロー!と
フツフツと怒りが込み上げてくる。

言い返そうにも
自分が喜んでもらえたらと思って
考えたことに対して不満に思われたのが
残念で仕方なく、言い返す気も起きてこなかった。

お互いに酔っ払って喧嘩した時ほど
俺たちの喧嘩はエキサイティングしてしまう傾向にあった。

俺は怒りと失望のあまり
そのどこにも向けられない感情をなんとかしようと
手に持っていた物を地面に叩きつけ、
口を開いても喧嘩になりそうだったので
その場を無言で去ろうとした。

すると、
待ちなさいよ!と手を引っ張られ、
やめろよ!と手を振り払う。

すると酔った勢いもあり、力を入れすぎていたようで
彼女の体はフラついて倒れそうになった。

昔から『やられたら、やり返す』
このやり方を貫いてきた女だ。
彼女の怒りがなぜかそこでピークに達した。

その瞬間…

ボッコーンッッ!!!!

完璧な左フックが飛んできた。

…えっ?!

(その時、後で元彼女から聞いた話では、
俺はとんでもなく見たこともない程に
驚いていた顔をしていたらしい。)

(ちなみに、その時の彼女の心境は
「あ。やっちゃった。…終わったな。」
と思ったそうだ。)

一瞬の脳震盪なのか、思わぬ行動からか
状況がつかみ取れない。

おい、まじかよ。やめろって!
とっさにもう一発は食らうまいと、
足をお腹にあてて引き離すように押し返した。

夜中の静かになった歓楽街ど真ん中で派手にもみ合い、
もう目立つのなんのって。

その押し返す場面から
ちょうど近くを歩いていた男二人組が見ていた。
深夜の暗がりでは俺が女を蹴ったように見えなくもないだろう。

幸い、戦いの2発目は飛んでくることなく
激しい言い合いに状況を立て直すと、
さっきから見ていた男二人組のうちの一人が
2メートル付近の至近距離で立ち止まり俺を睨み始めた。

俺はちょうどその時、壁側で背を向けて立っていた。
リングのコーナーに押し込まれたかのような状態。
なんだかやな予感…。

彼女は後ろにいる男には気づかず
言い合いを続ける。

至近距離で立ち止まった男は
一向に俺を睨みつけている。
話しをしたいが、男が邪魔でどうも気になる。

にいさん?さっきからなんや?
思わずイラつきから男に向かって言ってしまった。

男「あ?なに見とんねんコラ?」

いやいや見とるん自分やん。

男「お前誰に向かって言うてんのか分かってんのか?あ?」

辺りは中学生の喧嘩のようなダサい会話で一縮触発。
アホらしい会話の中で、緊迫した緊張感のある空気に包まれた。

はっ笑。
いやいやいやいや、知らんしらん。
だれ?

そう言うとお互い瞬時に戦闘態勢に入った。

先ほどまで謎にブチ切れていた彼女も冷静さを取り戻し
男と俺との喧嘩を引きとめようと仲裁に入る。

相手の男にも友人一人が付いて抑えにかかり、
お互いに喧嘩を止める者が付いた。

俺も男もただの深夜の酔っ払い。
『離せ。コイツとやらせろ。』
と言わんばかりに猪突猛進。
止める手を振り払おうとする。

男とはなんとバカな野性的な生き物だろうか。
こんな時には、なかなか引き下がれない。

数分、やんのかコラ的な言い合いを続けるが
まともなファイトも仲裁が入るので出来そうにない。

そんな事よりも。

第一
その男と喧嘩した所で
全く、何一つ意味がないと言うことだ。

更に更にどこにもその感情を向けられなくなって
吐き所を失い迷い込んでしまった俺の気持ちわかるだろうか。
イライラする気持ちをどうにか無理矢理グッっと堪えて
男との喧嘩もアホらしくなってきた。

酔っ払いのオッサンは
おウチに帰っておネンネしとけ!的な
意味のわからない捨て台詞を放って
おちょくるだけおちょくってから
(おちょくる=からかう)
タクシーに向かって歩き出した。

…すると。

その一部始終を更に見ていた者がいた。
神戸三宮の東門街で知らない人はいない位の、
悪質な酔っ払いで有名な黒人クリスが立っていた。
彼は自分のお店でも何度かトラブルを起こして
出入り禁止にしている因縁の仲だ。
この三宮で、酒癖が悪い彼が立ち入られない店は数十件とある。
身長2メートルを軽く超えた黒人で
自称元プロバスケットプレイヤー。
今日もフラフラ氷結缶酎ハイのロング缶を片手に
揺れる電柱かのように突っ立っていた。

彼は、タクシーに向かって歩く俺に向かって中指を立てて向け、
黒人特有の低くて図太い声で仕切りにこう言った。

ビィーッチ。

ビィーーーッチ。

ビィーッチ。

ビィーッチ。

何度もなんども中指を立てながら
俺に向かって言ってくる。

…。

ビィーーーッチ。

ビィーッチ。

…なに?

なんなの…これ?

その時、心の中で
大きく自分に聞いてみた。

先ほどからの災難続きに疲れ果てていた俺は、
すでに冷静さを取り戻し、更に怒れるほどの気力は
残されていなかった。

ビッチって女に使う言葉だし。
俺、女じゃねーし。

誕生日にサプライズして文句を言われ?
怒りを表すと本気の左フックを食らって?
やめろと押し返せば変な男が暴力振るってると思って寄ってきて?
結局、その全然関係の無い人と喧嘩になりかけて?
それでもなんとか我慢して堪えたと思ったら?
最後の最後に黒人から中指を立てられて罵声を浴びさせられた?

あぁ…神様。
こんな事があっていいのでしょうか。

災難に次ぐ災難で
もうなんだかやるせなくって
クリスを相手する気も失せ消えて
意気消沈してタクシーに彼女と乗り込んだのだった。


もう一度言うが、
ただの酔っ払いの勘違いから生まれたハプニング
今となってはただの笑い話し

誰にだってある男と女の些細な喧嘩の一部だ。
今回は、更にハプニングが重なったことが書く動機となった。

彼女もそう云った酔っ払った時の謎の勢い以外
とても完璧で素敵な女性だ。

悪く言うつもりではないのは分かってもらいたい。

故に別れた原因もこの事ではない。

無いとも言えない。


翌日、何があっても次の日に忘れられる
超パッピーボーイの俺だが、
さすがに昨晩の悲劇に対しては理解が出来ず。

「あームカつく。」

当分、その一言しか出なかった。

出発予定日だったが
こんな雰囲気で出発するのも腹の居所が悪い。
何としてでも解決して旅路に戻りたいところだ。

結局、なんだかんだ話し合って怒りも収まり、
やっとの事で和解することが出来たのだった。


滞在中、神戸で経営するBarで
一時帰郷イベントを開催。

平日にも関わらず神戸の仲間達は
わざわざ沢山の方が会いに来てくれた。
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みんな、本当にありがとう。

そして、一番に
このお店を支えてくれている
Justin(ジャスティン)
本当にありがとう。

ジャスティンはアメリカのアラスカ州出身、
8年ほど前に日本に留学して以来、日本に移り住み
今では関西弁をほぼ完璧に使いこなす
バイリンガルの耳を持つ男。

彼の特技はギターと歌。
自身で作曲し、歌詞も関西弁で歌うことが出来る。
様々なライブハウスや野外フェスにも出演するなど
特技の方でも活躍し、神戸の人達からの人気者。

以前、お店のことで彼と口喧嘩になったこともあったが
この日本生まれ日本育ちの俺が
アラスカの人に日本語でボロボロに打ち負けた事がある。
それほど日本語が話せる謎のアラスカ人なのだ。

頼りにしてます。
いつもありがとうジャスティン!!
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さて、会っておきたい人にも顔を見せられたことだし。

いよいよ北海道へ向けての準備は整った。

これからはヒッチハイク旅でいざ北海道へ!